「スマートシティ」とは?|日本における取組みと、その重要性

2020年03月20日

はじめに

本記事では、スマートシティについて国内をスコープに基礎的な情報を整理し、
  • スマートシティとは何であるのか
  • 国内のスマートシティではどのような取り組みがなされているのか
  • 近年、スマートシティの重要性が高まるのはなぜか
について、解説します。なお、類似する「スーパーシティ」との違いについては前回記事をご参照ください。

スーパーシティについての解説はこちら!

スマートシティとは

近年よく耳にする「スマートシティ」ですが、その定義は、地域・機関によって異なり、現状一義に定まるものではありません。以下に国内の各府省の定義を取り上げてみます。

経済産業省の定める「スマートコミュニティ」
「家庭やビル、交通システムを ITネットワークでつなげ、地域でエネルギーを有効活用する次世代の社会システム」

国土交通省の定める「スマートシティ」
『都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区』

総務省の定める「ICTを活用したスマートシティ」
『都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、生活の利便性や快適性を向上させるとともに、人々が安心・安全に暮らせる街』

このように、スマートシティの定義は国内の府省についても多様であり、それぞれ目指す姿も異なってきます。また、各府省ではスマートシティに関連する数多くの事業が実施されています。




それぞれ特徴の異なるスマートシティ関連事業を行っているために、その実態はつかみにくいかもしれません。

国内におけるスマートシティの取り組み

今日注目を集めるスマートシティについて理解するためにも、まず国内におけるこれまでの取り組みを整理します。

☆国内のスマートシティ
国内におけるスマートシティの取り組みは、実施時期・機能的特徴に応じて以下の2類型に大きく分類できます。

1.個別分野特化型スマートシティ
2.複数分野横断型スマートシティ

それぞれの類型について、順を追って整理していきます。

①個別分野特化型スマートシティ
国内におけるスマートシティの取り組みの始まりは、2010年頃にまで遡ります。この時期のスマートシティの取り組みは、「エコシティ」や「スマートコミュニティ」と表されるように、エネルギー分野に特化したものでした。都市におけるエネルギー消費の最適化を目指し、実現に向けいくつかの地域で先進的に実証を行うものであったと言えます。

例えば、2011年「次世代エネルギー・社会システム実証事業(経済産業省)」の一つとしてスタートした「けいはんなエコシティ」は、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等を活用した、家庭でのエネルギー使用状況の「見える化」や各機器をコントロールしてエネルギーの自動制御による効率的な節電効果の実証事業が行われました。

また、2012年頃になると、従来の「エネルギー分野」以外に着目したスマートシティの取り組みもでてきます。センサーネットワークを活用して減災情報(土石流情報、水位情報等)の提供を行うなど「防災分野」に取り組む長野県塩尻市や、「レクリエーション分野」における市内の施設データ(観光、文化・芸術、スポーツ施設等)のオープン化を実施し、利便性の高いまちづくりに取り組む石川県金沢市でもスマートシティの取り組みが始まりました。

②複数分野横断型スマートシティ
近年、注目を集めるスマートシティの類型です。
従来のスマートシティが「エネルギー分野」「防災分野」といった単一の分野についての取り組みを扱っていたのに対し、「複数分野横断型スマートシティ」では一地域で「環境」「エネルギー」「交通」「通信」「教育」「医療・健康」等の複数分野に対してIoTを活用した取り組みを行います。さらに各分野の都市課題に対して個別に対処するのではなく、分野間が連動し、全体最適を可能にすることを目指します。

例えば、2013年に開始する「スマートシティ会津若松」では、目指す姿を
「健康や福祉、教育、エネルギーといった市民生活を取り巻く幅広い分野での結びつきを深めながら、将来に向け、持続力と回復力のある力強い地域社会、市民の皆様が安心して快適に暮らすことのできるまち」(引用:地域活力の再生に向けた取組み~ステージ2~(平成25年2月)|会津若松市)とし、分野を超えたスマートシティの構想をスタートさせました。



なぜ今「複数分野横断型スマートシティ」が重要なのか?

では、なぜ今「複数分野横断型スマートシティ」に注目が集るのでしょうか。
分野横断的な取り組みの必要性について、国土交通省都市局の酒井氏は以下のように述べています。

「国交省ではこれまでもエネルギーを中心にした個別分野の取り組みがあったが、都市はいろいろな課題を抱えている。分野横断的に対処していなければならない。例えば、地方の道路を拡張すれば交通渋滞は解消するかもしれないが、その結果『車での移動が便利になったから』と住民の歩く習慣が減れば健康上の問題が生まれるかもしれない。全体を考えた政策が必要だ」(酒井氏)

つまり、都市課題は複雑であり、ある一分野における課題解決は、他分野において新たな課題を引き起こし得る。そのため、都市課題への対処のためには「分野特化型」ではなく、他分野と連動して全体最適を捉えられる「分野横断型」である必要がある、ということです。

また、これは日本に限った話ではありません。スマートシティの世界的動向はすでに「個別分野でのIT技術の実証」から、「都市の丸ごとのアーキテクチャの提示」へと分野横断を前提としたスマートシティ構想へと移行しつつあります。

先日、法案提出された「通称:スーパーシティ法案」が目指す「まるごと未来都市」も世界の動向に沿ったものであり、この実現のためには、分野に閉じずに都市全体を捉えた対処が可能な「複数分野横断型スマートシティ」である必要があり、その重要性が高まっていると考えられます。

スーパーシティについての解説はこちら!

まとめ

近年注目が集まるスマートシティについて、国内をスコープに以下のように整理しました。

  • 国内のスマートシティは「個別分野特化型」「複数分野横断型」の2類型に整理される。
  • 中でも「複数分野横断型」は重要性が高まっている。
  • 複雑な都市課題に対処するためには、「丸ごと」の都市構想が必要であり「複数分野横断型スマートシティ」はその前提となる。

Pnika編集部では、「通称:スーパーシティ法案」の動向と合わせて、それを実現する素地となる「複数分野横断型スマートシティ」の国内事例についても引き続き動向をチェックしてまいります。

(執筆:竹内 大智)

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参考文献

  1. 「京都スマートシティエキスポ2019」リポート(2)|新・公民連携最前線
  2. スマートシティの実現に向けて 【中間とりまとめ】|国土交通省都市局
  3. .全国自治体交流シンポジウム|京都スマートシティエキスポ2019
  4. 府省のスマートシティ関連事業|スマートシティ官民連携プラットフォーム

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