規制に関わる特例措置を受けられる!|1からわかる「国家戦略特区」

2020年03月06日

◆はじめに

「国家戦略特区」という言葉を見聞きしたことがある方も多いことでしょう。この記事では、国家戦略特区を概観すると共に、特区においてビジネスを行った際のメリットについて取り上げます。

◆概要

「国家戦略特区」(以下、「特区」といいます。)は、“世界で一番ビジネスをしやすい環境”を作ることが目的となっています。特区に指定された地域では、大幅な規制緩和、税制面での優遇を享受することができます。

「規制を緩和や優遇措置を行うことで、より多くの事業者を盛り上げたり、誘致したい」という自治体、そして「規制緩和や税制面での優遇措置を受けながらビジネスを展開したい」と考えている事業者向けの制度となっています。

「規制緩和制度」の全体を見渡したい方は、以下の記事もご覧ください。

◆特区に指定されている区域

特区として指定されている区域は、10区域(2020年2月現在)です。仙台、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、福岡市・北九州市等が指定されています。
特区に指定されている区域

これらの区域は、国・自治体・民間事業者の三者で構成される国家戦略特別区域会議を経て、国家戦略特別区域諮問会議(議長:内閣総理大臣)にて決定されたものになります。

◆特区で、できること

特区では、規制緩和を受けつつビジネスを展開することができます。例えば、以下のような事項に関する規制緩和を受けることができます。

これらを「規制改革メニュー」といい、現在特区では66の事項で規制緩和を受けることができます。

特区に指定された自治体や事業者からの提案によって、規制緩和が実現していく仕組みとなっています。この為、特区毎に特例措置の認定を受けた事業の数や活用状況が異なっています。

◆特区で規制の特例措置を受けるために

特区内で、特例措置を受けながらビジネスをするには|個別の事業認定
既に特区法等によって実現している規制緩和を受けるには、特区毎に設置されている窓口や内閣府 地方創生推進事務局に問い合わせを行うのがベターです。

内閣府 地方創生推進事務局が準備している問い合わせフォームは以下の通りです。

国家戦略特別区域諮問会議の審議を受け、総理大臣認定を受けると、特例措置を活用して事業を展開することが可能になります。

では、規制改革メニューに、新事業に関わる特例措置が存在しない場合はどうすれば良いのでしょうか? その場合には、「規制改革事項に関わる提案」を行い、規制改革メニューに事項を追加することができます、次のセクションでプロセスをみてみましょう。

特例措置の事項を追加するには|特例措置の創設
特区に指定された地方公共団体や、規制緩和を希望する事業者は、規制緩和に関わる提案を行うことができます。事業者は、他の事業者と共同して提案を行うことも可能です。

また、特区での規制改革のみならず、「当初から全国での規制改革を求める提案」も募集が行われています。

提案を行うには提案書を作成する必要があります。提案の要項、そして提案様式については以下のリンクをご覧ください。

提案によっては、必要に応じて国家戦略特区ワーキンググループの委員によるヒアリングが実施されます。その後、内閣府 地方創生推進事務局が中心となって、関係省庁との折衝、国家戦略特別区域諮問会議における調査・審議が行われることになります。

この後、大臣級の審議が行われ、最終的には特区法若しくは関係法令の改正といった形で、特区に規制改革事項が追加されます。

「特例措置の創設」と「個別の事業認定」


◆特区の活用例

ここで、特区での活用例、そして成果の一例をみてみましょう。千葉市等では、「テレビ電話等を使った薬剤師の服薬指導の解禁」という規制緩和を活用して事業が展開されています。
これによって、以下のような成果を上げることができているようです。

  • 自宅にいながら医療を受けて薬を受け取ることが可能になり、患者の負担が軽減
  • 薬剤師が患者宅を訪問する必要がなくなり、薬局側の負担も軽減

特区で、十分に影響や効果が見極められた場合には、規制緩和が全国展開する場合もあります。これまでに36件の事項が全国展開されています。

特区で検証を行った結果、規制緩和が全国的に適用された場合には、事業をあわせて全国展開できるという点は、事業者にとってアドバンテージになると考えられます。

◆まとめ

「規制緩和の優遇措置を受けながら、ビジネスを展開することができる」という点は、事業者にとって大きなメリットだといえます。

規制改革メニューの中には、自動運転、ドローン、AIやIoT等のいわゆるイノベーティブな事業に関わる事項があります。これらのイノベーティブな事業を展開していく際に、法規制が問題となる場合、特区内での特例措置によって、事業が大きくドライブする可能性もあるでしょう。事業の構想がある程度固まった段階で内閣府の地方創生推進事務局や国家戦略特区に指定されている地方自治体に相談してみるのがベターであると考えられます。

(執筆:町田 太朗)

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◆参考文献

  1. 規制改革事項の提案募集について|内閣府 地方創生推進事務局
  2. 規制改革メニュー|内閣府 地方創生推進事務局
  3. 国家戦略特区|内閣官房内閣広報室
  4. 国家戦略特区の活用事例|内閣府 地方創生推進事務局
  5. 【必見】イノベーターが活用出来る国の4つの「規制緩和制度」まとめ|Pnika

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