【図解】まず、知るべきスタートアップに必要な『ルールメイキング』の全体像

2020年01月10日

◆なぜ今、スタートアップがルールメイキングに取組むのか


昨今、「ルールメイキング」という単語を、スタートアップ界隈で聞くことが多くなった。今まで「ルール」とは、政府、あるいは影響力の大きい大企業が作るものだというイメージがあったが(実際にその部分もおおいにあるが)、なぜこのような風潮がでてきているのだろうか。

『Regulatory Hacking』を著したエヴァン・バーフィールド氏は、スタートアップの規制産業への挑戦に関するインタビューにおいて、スタートアップがルールメイキングに取り組まなければならない理由を下記のように述べている。

“テクノロジーで解決できる簡単な問題は解かれてしまったからです。「Instagram」や「Facebook」のようなサーヴィスにより、消費者としてのわたしたちの生活はデジタル化されましたが、市民としての生活はアナログなままです。病院や学校にはまだデジタル革命がゆき届いていませんから。これからのスタートアップは、以前ならば政府やNPOに委ねられていた困難な課題の解決に取り組まなければなりません。課題解決のためには政府と起業家、VCによるコラボレーションが必要なのです。”
雑誌『WIRED』日本版VOL.34より引用

つまり、規制産業を中心として、イノベーションのスピードに対してルールのアップデートが追い付いていない領域が存在し、これからのスタートアップはそこが事業機会になっていくと言われているのだ。

一方、ルールメイキングの世界はこれまで政府と大企業が中心に動いてきた領域であり、スタートアップに向けてオープンな情報やリソースが整っていない。本記事では、スタートアップを取り巻く「ルール」の全体像を概説する。

ルールの全体像 Standard&Regulation


まず、ルールの全体像を<図1>に示す。これをみて分かるように、まずそもそもルールとは大きく分けて”Standard(規格・標準)”と、”Regulation(規制)”の2つに分かれる。これらを総称してルールと呼んだ時、Standardは主に認証をベースにした民間・消費者からの支持、Regulationは主に立法をベースにした政府・行政の主導が根拠となる。

ルールメイキングとは、これらのルールのアップデートに向けて取り組む活動一般を指す。例えばRegulationについては、規制緩和だけでなく、自社が有利な形への規制強化や、自社が不利になる規制がつくられるのを阻止する活動などが挙げられる。

ルールメイキングに関係する活動として、より広義なものとしてパブリックアフェアーズが位置づけられる。パブリックアフェアーズには、ルールメイキングだけでなく、その根拠作りとしての政府交渉や、世論形成などを行い、自社のサービスの社会的受容性を高める活動も含まれる。

図1.ルールの全体像〖出所)デロイトトーマツコンサルティング「グローバル競争におけるルール形成戦略」(2018年3月)を参考にPnika作成〗


Standard(規格・標準)とRagulation(規制)の違いと相互作用


Standard(規格・標準)とRaguration(規制)の違いは、①作成者、②適用範囲、③遵守動機、の3点に表れる。ISOやJISなどを代表とするStandardは、民間事業者が作成した規格に対して、それを使うことにメリットを感じる事業者が、任意に選択して守るルールである。それに対して、法律や条例などで定められるRegulationは、政府が作成した規制は全事業者に強制的に適用され、事業者は許認可を得たり罰則を避けるために守るルールである。

表1.Standard(規格・標準)とRagulation(規制)の違い

この時点で、かなり性質が違うものであることが分かるが、これらには相互作用が存在する。それは、Standardは、Regulationに参照・引用されるものであるからだ。デロイトトーマツコンサルティングによると(※)、獲得したStandardを、Regulationに反映させることで、実質的なビジネスインパクトにつながることを「Standards×Regulations戦略」と称して提唱している。

上記の相互作用に関する議論は、主に規制強化を想定した議論だが、規制緩和においても同様の相互作用が見込まれる。例えば何らかの許認可制度の緩和を行おうとする際、安全性がボトルネックになっているケースなどは、先に民間事業者のみで現実的に守ることができる安全性対策のStandardを作成し、許認可の基準にそのStandardを参照させることができれば、議論が前に進むだろう。

また、Standard(規格・標準)については、特にものづくりスタートアップでは非常に重要になってきている。『製品・サービスを社会実装するためのルールメイキングとは(Startup Factory構築事業より)』というイベントのレポートでも詳しく説明をされており、こうしたイベントで実際に質疑を交えながら話を聞くことでより理解も深まりやすいだろう。

"最初にまず、ルールとは何かということから説明しますと、法律・法令で成り立ち、強制力がある「規制」というものと、規格等により成り立ち、強制力は無い「標準」というものの2つに分かれます。今回はこの「標準」にフォーカスして話しますが、これをあくまで任意で使うものですが、うまく規制と絡めることで、ビジネス上の大きなインパクトを得ることができます。(製品・サービスを社会実装するためのルールメイキングとは(製品・サービスを社会実装するためのルールメイキングとは(Startup Factory構築事業より)"

◆この記事の関連ページ

本記事の続編として、イノベーターの立場で『規制(Reguration)』についてどう捉えるべきかをしたためたので、参照されたい。

※Standardの詳細解説については、続編を掲載予定です

(執筆:中間康介)

◆本記事に興味を持ってくださった方へ


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◆参考・引用文献

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