Pnikaローンチイベント「社会起業・政策起業のための「オープン」なルールメイキングとは」@霞ヶ関を開催〔イベント〕

2019年08月01日


2019年7月25日、クラウドロー(Crowdlaw)・プラットフォームPnika(β版)をローンチし、お披露目を兼ね、「社会起業・政策起業のための「オープン」なルールメイキングとは」を考えるイベントをSENQ霞が関にて開催しました。

ゲストは、一般社団法人Public Meets Innovation代表の石山アンジュさんと経済産業省の海老原史明さん。「ロビイング2.0」を提唱し、イノベーターとパブリックを結びつけるミレニアル世代のコミュニティ、一般社団法人Public Meets Innovation 代表の石山さん、空飛ぶクルマという新領域において産官学での制度設計を経産省職員として実践される海老原さんと共に、これからあるべきルールメイキングのあり方を議論しました。

はじめに、ゲストスピーカーのお二人に、ご自身のプロジェクトと、これからの「オープン」なルールメイキングについてのアイデアをご紹介いただきました。


「新しいイノベーションを社会実装する民間という立場から、クラウドワークスでロビイングを担当した3年間、ルールの壁、政策の壁にぶち当たり、どうやって共感者を増やしていくのかを考えた。これまでのロビイングを自分たちの利益のためだけの陳情"ロビイング1.0"とすると、社会にとってこれは必要だよねと社会に問いかけていく手法があってもいいんじゃないか」

「これからのルールメイキングの世界観のためのニューパブリックには、”民と官の壁も溶かしたフラットな横のつながり”、”既存の業界だけでなくいろいろな人が法制度や政策の形成に参画できる手法”、”倫理観・社会的規範についても国民的議論が必要になるなか、政治とは別に議論ができる場”が必要だと思う」


「イノベーションを牽引するのはイマジネーション。役所の中で、既存の政策の延長線上の未来を考えることに限界がある。非延長線上、つまり未来からバックキャストする、デマンドサイドから考えることが重要」

「政府に情報が集まり、政府による法制度や政策形成が妥当だった時代もあったが、今後、組織体制を臨機応変に変えていくことも難しい。官民が混ざり、新しい設計図、アーキテクチャを使ったルール形成をやった方がいい。そこで意識すべきは4つの観点で、例えば、テクノロジーでは、リアルタイムに規制をかけていくことも可能になるので、事前・事後の規制にとらわれる必要がない。社会的受容性では、ルールできましたというのでは受け入れられず、少しずつ混ざって議論しながら妥当性を考えることで高めていく。多様な視点では、これまでの政策形成のプロというだけでなく、コミュニティに入っての合意形成など違った視点が求められる。そしてアジャイルな設計では、失敗してもいいけど少しずつやってみようという発想。これらを官だけじゃない組織で動かしていけないかを考えている」

続いて、Pnikaの代表の隅屋より、新サービスについてプレゼンテーション。


「みんながルールを変えられると思っていない、法制度のアップデイトがイノベーションのスピードに追いついてないの2点を課題として捉えている。マルチステークホルダーによるオープンなルールメイキングを実現して、ソーシャルイノベーションが創発され、民主主義がアップデイトされていくことが目指すのが、サービスのビジョン」

「Pnikaは、ソーシャルイノベーター、専門家、ガバメント関係者、市民の4者を結びつけるオープンなプロセスのためのプラットフォームで、メディアとしてルールメイキングのプロセスをオープンにしていく。個社ではなく、業界、社会のルールを変えていく必要があるとなると、誰が言い出しっぺになるのかが問題になり、変えなければならないルールが取り残されている。ルールメイキングは、お金も時間もかかる一大プロジェクト。言いだしてくれた人を、コラボメンバーとともに支え、みんなで一緒にルールを変えていけるエコシステムを作りたい」


Pnikaの最初の2つのプロジェクトの一つ「東北の自然と調和しながら、その価値を引き出す持続可能な事業を作りたい」のMARUMORI-SAUNA株式会社本田智訓さんからは、動画メッセージをいただきました。


「制度の壁を突破したいという思いはあるが、限られたリソースの中、具体的にどうすればいいのかに踏み出せないことが課題になっている。コラボメンバーのみなさんには、具体的アクションのきっかけをいただいて、一緒に一歩を踏み出していきたいので、ぜひ協力をお願いしたい。突破口ができたら、もちろんノウハウを囲い込むつもりはないので、まずは東北と共有して、新しい価値を提案していきたい」

続いてのトークセッションは、会場からの質問(slido)を軸に展開。


石山さんへは、「反対者をどう巻き込む?巻き込んできたか?」。
「2015年あたりUberが出てきた時に、「国会議員の2.5人に1人はタクシー・ハイヤー関連の議連メンバーだから気をつけたほうがいいよ」とのアドバイスをもらったこともあったが、ライドシシェアとは言わず、シェアリングの価値を広めることに注力した。例えば、一億総活躍社会、シニアも主婦もスキルと活かして働くというコミュニケーションにおいてのシェアリングの価値に反対する人は一人もいなかった。ここから少しずつ仲間を増やしていく。今、ライドシェアについても、交通弱者の問題として捉えると、議員からも一つの可能性として検討の俎上に載せてもいいんじゃないかという声が出てくる。共感してもらう社会アジェンダをどうつくるかが、まだまだ課題はあるがこの3年間で学んだこと」

海老原さんへは、「空飛ぶ車プロジェクトの再現性はあるか?」。
「あると思う。ただ官庁の中で新しいことをやるのは難しいし、議論はしたいが言えることは限られているという側面も確かにあるので、ポイントはあまりリスクを考えずに動ける若手。他省の若手にも声をかけながら、上の人の考えも少しずつ変えていく。打ち上げ花火で終わってしまっては意味がないので、省内でどう位置付けていくかという移行期が肝心。実は昔からこういう試みはあったと思うが、今はSNSもあり、仲間集めがしやすいのが利点。オンラインメディアを有効活用し、世論を盛り上げ、変えていくというのも一つのやり方で、可能性を感じている」

続いて、「イノベーションにはトライアルが必要。何かあったらどうするんだに対するブレイクスルーはある?」。
「日本は、確かに世論との関係で萎縮するというのが他の国よりもあると思うが、新しいテクノロジーが出てきた時に常出てくる問題でもあり、結局は、その利便性の恩恵を受ける人たちの声によって受け入れられていく。Uberは都会からの導入にこだわらなければよかったと思う。まず、受け入れられやすいコミュニティから入れていくこと。慎重に選び、対話していくということが急がば回れだと思う」


などなど、他にもたくさんの質問をいただきましたが、時間の都合上、おひらきに。ご参加いただいたみなさま、長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

最後に、石山さん、海老原さんも指摘してくださいましたが、私たちも、こういったお金にはなりにくく、人の思いで作られていく新しいサービスを、既存の体制側も含めた多くの人とのコラボレーションによって、どうメインストリームまで持っていくかは大きな課題だと認識しています。引き続き、試行錯誤を続けていくため、クラウドファンディングを始めました。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

(平尾久美子)

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