【流れを知る】政府が重要視する7分野の規制改革(2020年度版)

2020年02月14日

この記事のポイント

  1. 内閣府が公開している「規制改革実施計画(令和元年版|内閣府)」を要約
  2. トレンド知ることで、規制改革の対象になるもののケーススタディになる
  3. それによって、次の事業機会を読み解くヒントを得る

規制を変えるには「流れを捉えること」が必須

まず、規制を変える上で非常に重要になってくるのが「アジェンダセッティング」です。

“規制を緩和するにせよ、強化するにせよ、規制を変えるには政府を動かすことは不可欠だ。一方、現場の行政職員は、現行の規制を「変える」ことへ強いインセンティブがあるわけではない。行政が政策検討に動くためには、その動機を与える「アジェンダセッティング」が必要になる。”
【必見】起業家・新規事業担当者のための規制(Reguration)のあり方、変え方、考え方
そのアジェンダ(課題項目)が政府のアジェンダになることを「政策の窓が開く」と言われることもあります。
この「アジェンダセッティング」された状態にするには、下記の3点の流れが一致・合流することが条件と言われています。
  1. 【問題の流れ】世の中にその問題が認知され
  2. 【政策の流れ】行政機関や専門家によって政策案が作られ
  3. 【政治の流れ】その案が政策決定者に受け入れられる政治状態・国民のムード等が形成される
今回は、内閣府が公開をしている文書を紐解きながら、実際に政策の窓が開いている7分野を一緒に見ていきましょう。

規制が変わる場所は、言い換えれば「次の市場が出来る場所」でもあります。次の事業機会を読み解くヒントが得られるかもしれません。

政府の規制改革計画に盛り込まれている7分野

今回、参考にするのは「規制改革実施計画(令和元年版|内閣府)」です。2019年6月21日に閣議決定された文書となります。

この文書は、2016年9月から設置された規制改革を総合的に調査審議する内閣総理大臣の諮問機関(※)である「規制改革推進会議」をもとに制作されたものになります。
(※行政庁の意思決定に際して、専門的な立場から特別の事項を調査・審議する合議制の機関)

規制改革の重点分野と位置付けられているものが取り上げられており、正に「政策の窓が開いている」と政府が公言している分野についてが記載されています。

ひとつずつ見ていきましょう。

■政府が規制改革の重要分野に挙げる7分野
1.農林分野
【概要】
農業の成長産業化に向けて、生産性向上のための先進技術導入や生産資材・設備のコストダウンを図るとともに、新規就農のための環境づくりを行う

【どのような事業が関係するか?】
農林分野での規制改革に関係する主な事業活動は、
  • ドローンの農薬散布への利活用
  • 高機能農機・除雪機の利活用
  • 若者の農業参入等の促進
  • 農地利用の集積・集約化
  • 農協改革
  • 肥料取締法の改正
  • 畜舎に関する規制の見直し
  • 農作物栽培施設に係る立地規制の見直し
となります。
必ずしも何らかの法令の規制に限らず、支援制度や各自治体の事業計画や認定といった規制より広範な行政事業・制度についても改革のスコープに入っているのが分かります。

2.水産分野
【概要】
水産業の成長産業化に向け、改正後の漁業法に係る運用や、水産物や漁業生産資材の流通の透明化等を行う

【どのような事業が関係するか?】
水産分野での規制改革に関係する主な事業活動は、
  • 改正漁業法の運用
  • 水産物及び漁業生産資材の流通に関する総点検
  • 海技士の乗組み基準の見直し
  • 魚病対策の迅速化
となります。
「改正漁業法の運用」とある通り、改正後にどのようにその法令が”適切に現場で運用出来るか”といったことも重要な論点となります。

3.医療・介護分野
【概要】
国民自身の選択による自律的な健康づくり、医療・介護提供体制の充実、未来に向け
た医療・介護サービスの発展を行う

【どのような事業が関係するか?】
医療・介護分野での規制改革に関係する主な事業活動は、
  • 医療等分野におけるデータ利活用
  • 患者による医薬品情報へのアクセス改善
  • 機能性表示食品制度の運用改善
  • 日本医療研究開発機構の研究開発に係る各種手続の簡素化
  • 社会保険診療報酬支払基金に関する見直し
となります。
医療・介護分野は、規制以上にガイドラインの作成や見直しについての言及が多かったり、マイナポータルといった国のシステム基盤の施策と関連付けた仕組み全体の見直しが盛り込まれているのが印象的です。

4.保育・雇用分野
【概要】
働きたいと願う誰もが安心して就労できる環境整備を通じて、人手不足を克服し、日
本経済の持続的成長を実現する

【どのような事業が関係するか?】
保育・雇用分野での規制改革に関係する主な事業活動は、
  • 放課後児童対策
  • ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化
  • 介護離職ゼロに向けた対策の強化
  • 年休の取得しやすさ向上に向けた取組
  • 高校生の就職の在り方の検討と支援の強化
  • 福祉及び介護施設における看護師の日雇派遣に関するニーズの実態調査と公表
となります。
保育・雇用分野も、規制の壁よりも運用の壁についての言及が多いです。上記にはありませんが、給与の支払いの規制緩和として「ペイロールカードへの給与支払い解禁」についても「給与という大量の資金が、銀行口座を仲介せずに大量のデジタルマネーが流入する」等、キャッシュレスの流れと相まって注目されています。

「ペイロールカードへの給与支払い解禁」について気になる方は下記の規制改革会議で厚労省が提供している資料をご参考ください。

5.投資等分野
【概要】
第四次産業革命における技術革新など経済社会の環境の変化において、国民、企業の
活力向上を行う

【どのような事業が関係するか?】
投資等分野での規制改革に関係する主な事業活動は、
  • モバイル市場における適正な競争環境の整備
  • 教育における最新技術の活用
  • フィンテックによる多様な金融サービスの提供
  • 電力小売市場の活性化
  • 地方創生のための銀行の出資規制見直し
となります。
投資等分野は、既存の独占産業へのメス入れが入っている部分が多く見受けられます。それれは特に市場の大きな産業でもあるので、新しい企業にとって大きなチャンスがありそうです。

6.行政手続き
【概要】
我が国を「世界で一番企業が活動しやすい国」とすることを目指し、事業者の生産性
向上を後押しするため、事業者目線で規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に
推進し、利便性向上とコスト削減を実現する

【どのような事業が関係するか?】
行政手続きでの規制改革に関係する主な事業活動は、
  • 行政手続コスト 20%削減の対策強化
  • 個人事業主の事業承継時の手続簡素化
  • 中小企業・小規模事業者を対象とする補助金、社会保険手続等の簡易なオンライン申請の実現
  • 保育所入所時の就労証明書作成手続の負担軽減
  • 行政手続の簡素化、オンライン化における地方自治体の先進的取組の横展開
  • 住宅宿泊事業法に基づく届出手続の負担の軽減
  • 軽自動車保有手続にかかるオンライン・ワンストップサービスの実現
となります。

7.その他重要課題
【概要】
総合取引所の実現、各種国家資格等における旧姓使用の範囲拡大、副業・兼業、テレワークにおけるルールの見直し、日雇派遣におけるルールの見直し

【どのような事業が関係するか?】
その他重要課題として挙げられる規制改革は、
  • 総合取引所の実現
  • 各種国家資格等における旧姓使用の範囲拡大
  • 副業・兼業、テレワークにおけるルールの見直し
  • 日雇派遣におけるルールの見直し
となります。

まとめ

今回は、「規制改革実施計画(令和元年版|内閣府)」を参考に現在政府がどのような分野の規制改革を重点的に行っているのかを見ていきました。

気になる分野はありましたでしょうか。
規制改革について、「各分野でどのような議論がされているのかをもっと知りたい」と思った方はぜひ下記Webページより内閣府の『規制改革推進会議』の関連ページを覗いてみてください。


(執筆:深山 周作)

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◆参考文献

  1. 【必見】起業家・新規事業担当者のための規制(Reguration)のあり方、変え方、考え方(Pnika)
  2. 規制改革実施計画(令和元年版|内閣府)
  3. 規制改革推進会議投資等ワーキング・グループ提出資料(厚労省)
  4. 規制改革(内閣府)

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