新規事業が規制に抵触していないかカクニンできる!|1からわかるグレーゾーン解消制度

2020年02月07日

◆はじめに

「このビジネススキームって、法律に抵触しないだろうか...」
新しく事業を展開する際、こんな悩みに直面するイノベーターの方々も少なくないのではないでしょうか。今回は、新しく始めようと考えている事業について、法律の適用有無を、国に確認ができる制度について解説します。

◆概要

経済産業省は「企業の個々の事業内容に即して規制改革を進めていくことを狙いとして創設された制度 (出典:プロジェクト型「規制のサンドボックス」・新事業特例制度・グレーゾーン解消制度|経済産業省)」として ①プロジェクト型「規制のサンドボックス」、②グレーゾーン解消制度、③新事業特例制度 を設置しています。

このうち、グレーゾーン解消制度は、「新しく始める事業において、現行規制が不明瞭な際に、予め現行規制の適用有無を国に確認出来る制度」となっています。

「新規事業をローンチしたいのだが、▲▲という規制に抵触するのではないか」「調査してみたものの、法令の運用基準がわかりにくい」という事業者の方々にとってぴったりの制度となっています。

グレーゾーン解消制度を含む「規制緩和制度」の全体を見渡したい方は、以下の記事もご覧ください。
【まとめ】イノベーターが活用出来る国の4つの「規制緩和制度」|Pnika

◆制度の特長

この制度の特長として、①企業毎に照会・申請を行うことが可能 ②正式申請後(正式な申請書を提出した後)、原則1ヶ月以内に、規制を所管している省庁から回答を得ることが可能 ③事業を所管する省庁がしっかりとサポートしてくれる、という点が挙げられます。

③に関連し「確認したい規制が明確ではない場合であっても、相談することが可能である」ことは特筆すべき点であるといるでしょう。

この制度の事業者の活用に関して経済産業省は「確認したい規制が明確か/明確ではないか」という点において、おおまかに二種類に分けています。

  • 現時点で、確認したい規制が明確な事業者
  • 現時点で、確認したい規制が明確でない事業者や、申請書作成に不安をもつ事業者など

ここから「●●というサービスを考えているが、もしかしたら規制に抵触してしまうかもしれない」という漠然とした悩みを抱えているイノベーターであっても、グレーゾーン解消制度を活用する道が開けていることがわかります。


◆照会の流れ

では、実際にグレーゾーン解消制度を活用する場合の流れをみてみましょう。

①経済産業省へ相談
まずはグレーゾーン解消制度の問い合わせ先となっている経済産業省の新規事業創造推進室へ相談を行います。
(経済産業省 経済産業政策局 産業創造課 新規事業創造推進室,03-3501-1628(直通),shinjigyo-kaitaku@meti.go.jp)

②事業所管省庁へ相談
その後、事業所管省庁への相談が行われます。この相談のプロセスでは、「実際に規制に抵触する可能性があるのか」という点について経済産業省のみならず事業所管省庁を交えて論点の整理が行われます。

「事業所管省庁」とは、事業者が展開している事業を所管している省庁のことを指します。グレーゾーン解消制度では、事業所管省庁を通じて、規制を所管する「規制所管省庁」へ回答の要請を行う流れとなっています。

この相談を受けて、規制所管省庁に対する調整も行われることもあります。申請書の提出を行う場合、規制所管省庁から「この事業はグレーである」との判断が回答として返ってくる可能性もある為、「申請書の提出を行うか/行わないか」という点について、事業者の判断が求められる場合もあります。

③申請書を作成・提出
省庁との間での論点の整理が完了し、事業者が「実際の申請を行う」ことを決定したならば申請書を書式に沿って作成し、事業所管省庁へ提出します。事業所管省庁は相談内容を踏まえて、関連する規制についての確認や、申請書の様式、記載内容に関わる改善点を提案する場合があります。これを通じて、申請書をブラッシュアップしていきます。

申請書の申請様式は以下のページよりダウンロードが可能です。

④事業所管省庁、規制所管省庁に回答の要請・折衝を実施
ブラッシュアップされた正式な申請書が提出された後、事業所管省庁は、規制所管省庁に申請書に対する回答の要請と折衝を実施します。

⑤回答を取得
正式申請後、1ヶ月以内(原則)に、「その事業が規制に抵触しているか / 否か」についての回答を得ることができます。

経済産業省の資料には以下のようなフローが示されています。

グレーゾーン解消制度を活用する際の具体的なフロー

◆注意するべきポイント

グレーゾーン解消制度では、正式申請後、原則1ヶ月以内に回答を得ることができます。しかし、相談を行ってから正式な申請書を提出するまでに多大の時間を要する為、時期や時間にバッファを持たせて申請する必要があるといえるでしょう。

また、相談を行った際に、「明らかにグレーである」という点が顕在化する可能性もあります。「多大のコストを投じたにも関わらず、グレーである為にサンクコストになってしまった」という事態を避ける為にも、早い段階でグレーゾーン解消制度の活用を検討するのがベターであると考えられます。

もしかすると、他の「規制緩和制度」を利用する方が望ましい、との提案を受けるかもしれません。懸念点が少しでも存在するのであれば、「早めの相談」が望ましいといえます。

◆まとめ

イノベーターが、現行の規制の中で不明瞭な部分に乗り出していく際には不安がつきものです。グレーゾーン解消制度を利用し、国から規制の適用の有無を回答してもらうことで、新しい領域へ乗り出していく際に「安心感」を得ることができます。

新たなアイデアが思いついた際に、”規制への抵触に関する懸念点”が少しでも頭をよぎったなら「グレーゾーン解消制度」の利用を検討してみてください。

(執筆者:町田 太朗)

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◆参考文献

  1. 産業競争力強化法に基づく企業単位の規制改革制度について|経済産業省
  2. プロジェクト型「規制のサンドボックス」・新事業特例制度・グレーゾーン解消制度|経済産業省
  3. 【まとめ】イノベーターが活用出来る国の4つの「規制緩和制度」|Pnika

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