台湾発の合意形成プロセスを学ぶワークショップ@霞ヶ関・鎌倉を開催(前編)〔イベント〕

2019年3月9日(土)、10日(日)、「Workshop for Designing Open Legislation Platform in Japan 」(官民協働による参加型の制度設計を実現するワークショップ)を、Code for Japanさんと共催で開催しました。ご参加いただいたみなさま、事前アンケートにご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。長時間にわたりおつきあいいただき、感謝しかありません。私たちのイベントは実験の要素がかなり濃いものでもあり、使用したドキュメントやツールはアーカイブし、みなさんと一緒にここから新しい合意形成のカタチをつくっていきたいと考えています。

イベントは両日とも、前半に台湾から迎えた、シビックテックチームのゲストによるプレゼンテーションにより先進事例を学び、後半にワークショップで体感してみるという構成にて行いました。まずは、前半の台湾チームからのプレゼンテーションについてのレポートをお届けします。


進行は、Pnika代表理事の隅屋輝佳、Code for Japan代表理事の関治之さんにサポートいただきました。

台湾から、デジタル担当大臣Audrey Tang(オードリー・タン、唐鳳)さんとそのオフィスであるPDIS(ピディス)、市民参加プロセスの推進を各省庁で担当する行政官のネットワークであるPO Network(ピーオーネットワーク)、シビックテックのコミュニティであるg0v(ガブゼロ)、g0vが2014年に立ち上げたボトムアップの政策形成プラットフォームvTaiwan(ブイタイワン)のメンバーが参加してくださいました。 (一応組織はわかれているのですが、「コミュニティ」なのでそれぞれに重複したり連携したりとゆるやかな関係性があるところも興味深いです)

まずはLisa(林 冠妤)さんより、vTaiwanについて(プレゼンテーションシート)。


Day1

2014年3月のひまわり学生運動の後、当時の無任所大臣がg0v(ガブゼロ)コミュニティのハッカソンで「二度と市民と行政のここまでの乖離をうまないようなプラットフォームをつくりたい」とピッチ。2014年12月「制度設計のブラックボックスを開く」vTaiwanのプラットフォームが立ち上がりました。以来26のケースを扱い、80%が政府の決定アクションに影響を与えています。

プラットフォームの目的を「けんかをしても良いから、本音で課題解決のために話し合う」とは言うものの、例えば、文字起こしで記録する、なるべく多くのステークホルダーを探し出す、課題によって違うプロセスやツールを使うなど「けんかを避ける」ための工夫が試行錯誤されています。それでも行政や市民、それぞれのステークホルダーのコンセンサスをどう歩み寄ってつくっていけるかは大きな努力が必要。「もしかすると、ニーズはすぐには解決されないかもしれない、でも残った記録は未来の礎になります。課題解決を政治力に頼るのはまちがっている。みなさんのように新しい政策づくりを期待しているひとたちを集めることが重要です。vTaiwanとはそういったコミュニティです」。

vTaiwanはクラウドローの分野では先行する成功事例として有名ですが、やはりそんなに簡単な話ではなく、順風満帆とはいかないようです。でも、台湾には他にも政府主導の「公共政策」も出てきており、ボトムアップの制度設計プラットフォーム間の競争が始まっています。g0vのカルチャーが、政治分野に大きなインパクトをもたらしているという印象を受けました。

続いて、Tmonk(謝 長恩)さんより、Mind Mappingツールについて(プレゼンテーション原稿)。vTaiwanで実際に議論されたリベンジポルノの事例を挙げて、このツールがどのように使われたのかを紹介いただきました。


Day2

リベンジポルノ問題は、2017年に一度vTaiwanでミーティングがセットされましたが、この時点では世間の関心を大きく集めることはなく、法制度化には至りませんでした。しかし「私たちは失敗だと思わず、価値があると思った」ので、誰でも許可なしに使用できるよう、ミーティングのスクリプトやビデオレコードを公開。翌2018年、新たな事件の発生を機に、あらためてこの問題が注目を集めるようになると、Taipei Women’s Rescue Foundationの草案をベースによりよい法案への議論をすべく、2回目のコラボレーションミーティングをホストしました。議論は、セクシャルな画像の定義、当初には合意があることのディレンマ、ブロックチェーンで公開された場合など多岐に渡りました。

ここで活用されたのが、オンラン上で意見を集約していくツールである、Mind Mappingツール(今回のワークショップはオフラインでこの仕組みを取り入れたものにチャレンジ)。このツールにより、幅広い議論にもかかわらず、90%の議論を集約することができたそうです。課題をカテゴリごとにソートする、また課題や解決策などを色分けして表示するなどにより、議論の全体が俯瞰できるようになり、「ミーティングのなかで同じ議論を繰り返さなくてすむ、意見が衝突しているところがどこなのかが一目でわかるので、ファシリテーターが強調して議論をリードできる、またそういった課題がどういうルートで浮上したのかを遡ることもできます」。

たしかに有益なツールですが、非常に高度なファシリテーション能力が要求される気もします。実際どのようにやっているのでしょう……ライブでぜひ見てみたいです。

外務省のPOである、Cheng(銭 慕賢)さんからは、台湾のオープンガバメントの取り組みについて(プレゼンテーションシート)。


Day2

オープンガバメントのコアバリューは「透明性 Transparency」「参加 Participation」「説明責任 Accountability」「包摂 Inclusion」。その実現のために、公私のパートナーシップが不可欠あり、それをつなぐのが、Audreyさんが大臣になって立ち上げた、Participation Officer(PO)Networkという行政サイド、省庁をまたいだネットワークです。POは各省庁に最低1人はいるとのこと。そして、PO Networkでは、四半期ごとミーティング、月次ミーティング、共創ミーティングが開催されます。

「イシューが現れると、共創ミーティングが開催され、私たちはステークホルダーを集め、次になにをすべきかを話し合います。つまり、ファシリテーターとして機能します。POに求められるのは、熱意、コミュニケーション能力、政策に通じていること、インターネットツールを使いこなせること。最後の点は私もまだ勉強中(笑)。そして、法律や制度に関わる以上、議員を巻き込むことを忘れないことはとても重要です」。

共創ミーティングでは、プラットフォームで5,000件以上の投票などを集めた議題を中心に話し合われ、議事録も公開されています。ただし、POによる事前準備がとても重要で、テーマオーナーは誰か、ステークホルダーは誰か、課題をどう設定するかなど、周到な準備のもと開催されているようです。アジェンダセッティング能力が問われますね。

2日目には、Peace(陳 人和)さんも登壇し、vTaiwanが実際にどう動いているのか、そのプロセスについて補足いただきました(プレゼンテーションシート)。


Day2

「従来のディスカッッションというのは1つのテーブルで行なう、vTaiwanでは、インターネットも活用して複数のテーブルで行なうというイメージで、対抗(Challenge)するのではなく、協働(Collaborate)するためのプロセス。行政ではなく市民のほうが情報を持っていることもあるからです。vTaiwanのプロセスでは、プロポーザル、そのチェックに始まり、市民、PDISなど複数のアクターが関わりながら、意見徴収やミーティングを繰り返し、その精度を高めていく。この新しいディスカッションでは、行政や専門家が使う言葉を翻訳するような、ホストが重要です」。

ここでもホスト、つまりファシリテーターの重要性が指摘されていました。 また、のちほどAudreyさんに教えていただきましたが、vTaiwanでつくられる草案はそのまま国会に提出されるレベルとのこと。このプロセスには、政府関係者も登場しますが、vTaiwanコミュニティには、法律の実務家なども多く参加されているようです。

さて、ここからは、台湾チームのプレゼンテーションに対してSli.do(スライド)で受けていた人気のある質問について、Audreyさんに順番に回答いただきました。


Day1

Sli.doは、プレゼンテーション中などにウェブで質問や意見を受け付けるツールで、ユーザは気になるコメントに投票でき、人気のあるコメントが上位に表示される仕組みになっています。声の大きな人に質問を独占させない、また配信イベントなどでは会場外からの質問も受けられるなどの利点があります(実際に使用したSli.doはこちら、Day1/Day2)。

いくつかご紹介すると… デジタルリテラシーの格差の問題については、「テクノロジーの空間に来てくださいと言っているのではなく、人々のいる場所にテクノロジーを持って行ったということ。対面のミーティングを置き換えようというのではなく、これまで参加できなかった人にSli.doやライブストリーミングで参加の間口を広げる。またツールと言えば、vTaiwanやコラボレーションミーティングでは課題をマッピングしますが、これは基本的に人々が同じ事実、同じ感情について話をしていることを確認するためにやっています。同じものをみて、感情をシェアすることが重要です」。

プラットフォームで5,000以上の投票を得た案件はどんな案件であれ必ずとりあげるのかについては、「必ず取り上げます。一つの省庁で手に負えない案件として、ドクターヘリを僻地である居住地に飛ばして欲しいとの住民からの誓願がありました。POが地元に入ると、本当のニーズは地元に病院が必要であるということがわかり、省庁が連携して対応しました。担当省庁ではないからと押しつけ合うのでなく、本当に課題を解決するためにネットワークを活用して、話し合うということが大切です」。

サイレントマジョリティをどう巻き込むのかについては、「私たちは、マジョリティ、マイノリティという考え方をしません。人にではなく意見について議論することが重要。Pol.isでは、どちらのクラスターの数が多いかではなく、このクラスターのエリアの広さに注目すると、同クラスター内でも実に多様なことがわかります。人ではなく、論点にフォーカスすると、争いのない論点というのが実は多く、議論すべき論点というのは絞られていることもわかります」。

価値のあるボトムアップのインプットをどううみだすか。 対話を重視し、感情をケアした合意形成をどうすすめるのか。 実施、説明責任の主体の巻き込みなど、ボトムアップという新しいインプットを、既存の制度設計プロセスとどう連結させていくのか。 みなさんのプレゼンテーションとAudreyさんのコメントにより、台湾が目指すシステムがおぼろげながらも浮かびあがってきました。 g0vはコミュニティであり、ネットワークであり、彼ら自身もプロセス全部や各所で使われているツールをすべて把握しているわけではないとのこと。「でもそこには確かな哲学があり、方法論があるんだよね」と、CFJの関さんもおっしゃっていましたが、ここは引き続き学んでいきたいところです。


これまでの写真にもたびたびモニターが登場しているので、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが……今回2日間にわたり、Code for Nerimaの青木秀仁さんにUDトーク(ユーディートーク)でサポートいただきました。UDトークはコミュニケーションの「UD=ユニバーサルデザイン」を支援するためのアプリで、マイクを通じた話者の言葉を音声認識してモニターに表示させると同時に、日本語から英語、英語から日本語への翻訳も表示させることができます。青木さんからも、参加のプロセスを考えるイベントを設計するうえで、重要な視点の示唆をいただきました。

後半のワークショップについては、後日改めてレポートします。

Event
Code for All Program
– Workshop for Designing Open Legislation Platform in Japan –
(官民協働による参加型の制度設計を実現するワークショップ)
共 催:一般社団法人Code for Japan、一般社団法人Pnika
協 力:g0v、vTaiwan、PDIS
後 援:鎌倉市役所(Day2)
日 時:Day1.2019年03月09日(土)13時〜18時(会場:SENQ霞が関
Day2.2019年03月10日(日)13時〜18時(会場:鎌倉市商工会議所
テーマ:Day1.デジタルトランスフォーメーション時代の本人確認
Day2.テレワーク・ライフスタイルを考える -古都鎌倉から始まる多様で”らしい”生き方-
対 象:官民協働による参加型の制度設計やテーマに興味を持つ方
費 用:0円(懇親会は別途)
持ち物:名刺×2
定 員:Day1.30名
Day2.30名
言 語:日本語・英語(通訳あり)
*当イベントはシビックテックの国際的なネットワーク「Code for All」のexchangeプログラムとして実施されました。

(平尾久美子)